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岡山地方裁判所 平成3年(ワ)707号 判決

原告

田中勝志

被告

久谷伸子

ほか一名

主文

被告古山義幸は、原告に対し、金一三四一万五四三八円及びこれに対する平成二年一〇月一八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

原告の被告古山義幸に対するその余の請求及び被告久谷伸子に対する請求を棄却する。

訴訟費用は、原告に生じた費用の二分の一及び被告久谷伸子に生じた費用を原告の負担とし、原告に生じたその余の費用及び被告古山義幸に生じた費用を六分し、その一を同被告の、その余を原告の負担とする。

この判決第一項は仮に執行することができる。

事実

第一申立

一  原告

被告らは、各自、原告に対し、金八二五四万九〇五一円及びこれに対する平成二年一〇月一八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告らの負担とする。

仮執行宣言

二  被告ら

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第二主張

一  請求原因

1  本件事故

日時 平成二年一〇月一七日午後九時四〇分頃

場所 岡山市藤田二〇〇四番地の一先国道上

関係車両

自動二輪車(岡山め四九―六六、以下「本件二輪車」という)

右運転者 被告古山

右同乗者 原告

普通貨物自動車(岡山四〇や二四七、以下「本件普通車」という)

右運転者 被告久谷

態様 交差点を右折中の本件普通車に、対向直進してきた本件二輪車が衝突

2  責任

被告久谷は、本件普通車を所有していたものであり、被告古山は、本件事故について、前方注視を欠いた過失がある。

従つて、被告久谷は自賠法三条の運行供用者責任を、被告古山は民法七〇九条の不法行為責任をそれぞれ負う。

3  権利侵害

原告は、本件事故により、右大腿骨開放性骨折、骨欠損、骨盤骨折、右閉鎖動脈損傷等の傷害を負い、川崎医科大学附属病院に平成二年一〇月一七日から平成四年二月一四日まで四八六日間入院し、同月一五日から同年六月一〇日まで通院して治療を受け、同日症状固定し、膝関節に可動域制限(伸展マイナス一五度、屈曲七〇度)の障害を後遺し、右後遺症は自賠責により後遺障害等級六級と認定された。

4  損害

〈1〉 治療費 一三一万〇四六〇円

自賠責填補分を除く原告負担にかかる治療費

〈2〉 入院雑費 四八万六〇〇〇円

入院一日当り一〇〇〇円の四八六日分

〈3〉 入通院慰謝料 二五〇万円

〈4〉 後遺障害逸失利益 七六二一万二五九一円

平成三年賃金センサス小学新中学卒男子の全年齢平均年間給与額四七七万三〇〇〇円に労働能力喪失率として0・六七を乗じ、稼働年数四七年に対応する新ホフマン係数二三・八三二を乗じて得た額

〈5〉 後遺障害慰謝料 一〇〇〇万円

〈6〉 弁護士費用 五〇〇万円

5  填補 一二九六万円

自賠責後遺障害補償保険金の受領

6  結論

よつて、原告は、被告らに対し、各自、損害合計額から填補額を控除した残額八二五四万九〇五一円及びこれに対する本件事故の後である平成二年一〇月一八日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  被告久谷

請求原因1は認める。

請求原因2のうち、被告久谷が本件普通車を所有していたことは認める。

請求原因3は認める。

請求原因4は争う。

2  被告古山

請求原因1は認める。

請求原因2は争う。

請求原因3は認める。

請求原因4は争う。

三  抗弁

1  被告久谷

〈1〉 免責

本件事故の当時、被告久谷は、交差点で左右の安全を確認して本件普通車を右折進行させていたのに、他方、被告古山は、盗難車で改造整備不良状態にある本件二輪車を、無免許、夜間無灯火、制限速度違反の暴走運転をして、交差点に突入してきたものであるが、原告は、被告古山の右違法且つ無謀な運転行為に加担しこれを助長しながら本件二輪車の後部にノーヘルメツトで同乗していたものであるから、本件事故は、被告古山及び原告の一方的過失により発生したものである。また、本件普通車には、構造上の欠陥又は機能の障害がなかつた。

従つて、被告久谷は、自賠法三条但書により免責される。

〈2〉 過失相殺

仮に免責まではされないとしても、本件事故状況からすると、大幅な過失相殺が為されるべきである。また、本件事故は、いわば被告古山と原告の故意に近い共同不法行為が大半の原因となつて生じたものであるから、公平の見地からして、原告の損害賠償については、被告久谷は被告古山と不真正連帯関係に立たないものというべきであり、被告両名が負担すべき賠償額は、それぞれの過失の割合に応じて個別に認定すべきである。

2  被告古山

本件事故前、原告は、被告古山が本件二輪車に友人を同乗させていたのに、これを無理やり下車させて飛び乗つてきたものであり、被告古山に賠償責任はない。仮に責任があるとしても、賠償額は減ぜられるべきである。

四  抗弁に対する認否

抗弁1〈1〉は争う。被告久谷は、本件事故の際、前方注視を欠き、交差点をいわゆる早回りの方法により右折した過失がある。

抗弁1〈2〉は争う。

抗弁2は争う。

第三証拠

本件記録中の証拠に関する目録のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  本件事故

請求原因1は当事者間に争いがない。

二  責任

1  被告久谷

請求原因2のうち、被告久谷が本件普通車を所有していたことは、原告と被告久谷との間において争いがないところ、右は、一応、自賠法三条本文の運行供用者責任事由に該当する。

2  被告古山

乙ア第一ないし第一二号証、原告及び被告両名各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、被告古山は、本件事故の際、本件二輪車の後部に原告を同乗させ、夜間、前照灯のない右車両を時速六、七〇キロメートルの高速で走行させ、玉野市(南西)方向から岡山市街(北東)方向に向けて現場交差点にさしかかつたが、手前で、本件普通車が対向してくるのを同車の前照灯によつて発見し、同車が右折のウインカーを点滅させて、交差点を右折しようとしているのを認めたのに、現場が暗く自車が無灯火であるから、同車が自車を発見できないかも知れないなどとはつゆ考えもせず、自車が直進車で優先権があり、対向する本件普通車の運転者が自車を発見して道を譲るべきであるとの身勝手かつ無鉄砲な判断の下に、同車の動静を注視することなく、僅かにエンジンブレーキを効かせて時速約五五キロメートルで交差点内に自車を進入させた結果、本件二輪車に気付かず右折を開始した本件普通車の右前部に、自車の右前側部を衝突させ、自車を転倒させたことが認められ、被告両名各本人尋問の結果中、右認定に反する部分は信用できない。

右認定事実によれば、被告古山は、本件事故について、夜間無灯火による高速走行、対向右折中の本件普通車発見後の身勝手かつ無鉄砲な判断過誤、同車に対する動静注視の懈怠の過失があり、民法七〇九条の不法行為責任を負うものというべきである。

三  権利侵害

請求原因3は当事者間に争いがない。

さらに、甲第二ないし第六号証、原告本人尋問の結果、調査嘱託の結果(三井海上火災保険株式会社岡山支店回答)並びに弁論の全趣旨によれば、原告の後遺障害は、自賠責により、骨盤骨折による骨盤変形について後遺障害等級一二級五号相当、右大腿骨開放性骨折による右膝関節機能障害(著障)について同等級第一〇級一一号相当、右大腿骨変形、骨移植による右下腿偽関節について同等級第七級相当として併合第六級相当と認定されたこと、現在、原告は、松葉杖なくして跛行しているが、右膝は変形が顕著で、曲げ伸ばしが困難であり、足首の動きが悪く疲労しやすく、骨盤の痛みは感じなくなつたが、右大腿骨は常時苦痛があり、オートマチツク車の運転免許を取得し、就職に努力しているものの、佇立や歩行を要する就労には耐えられない状態であることが認められる。

四  損害

1  治療費

甲第七号証の一ないし一一、原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、原告は、本件事故による傷害の治療費として、自賠責填補分一二〇万円以外に、一三一万〇四六〇円を要したことが認められる。

2  入院雑費

前記三のとおり、原告の入院日数は四八六日であるところ、入院一日当りの雑費は一〇〇〇円と認めるのが相当であるから、その合計は四八万六〇〇〇円となる。

3  入通院慰謝料

前記三の原告の受傷の部位内容のほか、四八六日間の入院日数に、平成四年二月一五日から同年六月一〇日までの通院期間(甲第六号証によれば、通院実日数は一〇日と認められる)からすると、入通院慰謝料は二五〇万円と認めるのが相当である。

4  後遺障害逸失利益

乙第一〇号証、原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、原告は、昭和四六年九月二日生の本件事故当時一九歳(症状固定当時二〇歳)の男性であつたが、昭和六二年三月中学校を卒業して後、就職したが長続きせず、寿司店員、工員、解体作業員等を転々とし、右事故までの三年半ほどの間のうち、就業していたのは半分位の期間で、あとは不良交遊するなどして遊び暮らしており、右事故当日は、たまたま板金工として就職した一日目であつたことが認められる。

右認定の学歴やさほど稼働意欲があるとは見られない就労状況等に照らすと、原告の将来の逸失利益を算定する場合、その基準年収額として想定できるのは、せいぜい平成三年賃金センサス第一巻第一表産業計男子労働者小学新中卒企業規模計一八ないし一九歳の年間平均給与額二三五万八二〇〇円程度であり、それ以上の金額は相当性を欠くものというべきである。

また、前記三の後遺障害の部位内容からすると、原告が就労するにしても主に肉体労働が予想されることからすると、その労働能力の喪失の程度は、労働基準監督局長通牒昭和三二年七月二日基発第五五一号の労働能力喪失率表の後遺障害等級第六級の六七パーセントに達するものと認めるのが相当である。

従つて、原告の後遺障害逸失利益は、年間平均給与額二三五万八二〇〇円に労働能力喪失率として〇・六七を乗じ、就労可能年数四七年(六七歳から症状固定時の年齢二〇を差し引いたもの)に対応する新ホフマン係数二三・八三二を乗じて得た三七六五万四四一七円と認めるのが相当である。

5  後遺障害慰謝料

原告の後遺障害の部位内容程度からすると、その慰謝料は一〇〇〇万円と認めるのが相当である。

6  合計 五三一五万〇八七七円

五  免責(被告久谷)

乙ア第一ないし第一二号証、原告及び被告両名各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

本件事故現場は、岡山市街(北東)方向から玉野市(南西)方向に通ずる二車線(交差点直前は右折車車線が付加されて三車線)の国道に、北西方向から南東方向に通ずる道路が交差する交差点であり、周囲は非市街地で昼間は見通しはよいが、右事故当時は、夜間で道路照明はなく、暗くて見通しはきかない状態であつた。

被告久谷は、ひとり二児を抱えて会社員として稼働する女性であるが、本件事故当時、夜間のパート勤務に赴くため、国道の岡山市街方面から玉野市方面に向けて本件普通車を運転して現場交差点にさしかかり、右折のためウインカーを点滅させながら減速して右折車線に入つた際、周囲に車両や歩行者は全く見あたらず、前方は暗く、対向車について照灯等なんらの気配を認めなかつたことから、時速約一五キロメートル程度で右折を開始したところ、衝撃を感じ、停止した後、本件二輪車と衝突したことを知つた。

被告古山及び原告は、本件事故当夜、他数人の不良仲間とともにたむろして、普通乗用車と本件二輪車に分乗し、特に行くあても目的もなくこれらを乗り回していた。

本件二輪車は、被告古山及び原告の知人である大垣伸吾が所有者である取下前の相被告であつた山田茂宏から窃取し、前照灯を取り外し、マフラーを切断し、ナンバープレートを取り外して改造した車両であつたが、被告古山及び原告は、右改造の状況から本件二輪車が盗難車であることを薄々感じていたが、敢えてこれには触れないで乗り回していた。

被告古山は、無免許で本件二輪車を運転していたが、原告は、被告古山の免許取得の有無について格別の興味はなかつた。

原告は、本件事故の際、運転する被告古山の腰に抱きつく形で本件二輪車の後部に座つて乗車し、同被告が夜間無灯火で高速走行することを容認していた。

以上の事実が認められ、被告両名各本人尋問の結果中、右認定に反する部分は信用できない。

右認定事実及び前記二2認定事実(被告古山の本件事故の際における運転状況及び過失内容)を対比し、走行中の車両から夜間の暗がりを対向高速走行してくる車両を発見することは極めて困難であるのに対し、対向車が前照灯を点灯照射していればその発見は極めて容易であることからすると、無灯火で高速走行してきた本件二輪車を発見できず右折を開始した被告久谷の運転行為に落ち度は認め難いのに対し、敢えて危険を省みず無灯火による高速走行に及び、対向右折中の本件普通車を発見しながら身勝手かつ無鉄砲な判断に頼り、同車に対する動静注視を欠いていわば交差点に突入し、事故惹起に至つた被告古山の運転行為はもはや無法無謀の極みというほかなく、その過失はまことに重大であるから、本件事故は、被告古山の一方的過失によるものと認めるのが相当である。

なお、乙ア第九号証によれば、捜査段階の被告久谷の供述中には、「この事故を起こした原因は、私が前方に対する注意が不足していたことです。私は右折するため、交差点の右方向を見ていたと思います」などと、事故の過失を自認するかのごとき部分が存するが、同被告は、右供述部分に続けて、「私が前方に対する注意が足りなかつた理由は、当時対向車線から進んでくる車が全く見えなかつたからです・・・私は、無灯火のオートバイが接近していたとは全く予測していませんでした」と述べており、要するに、無灯火の車両を予測しないで、これを発見できなかつたことを注意不足とするものであるが、通常、自動車運転手は、夜間暗がりの国道を交差点に無灯火で高速突入してくる車両の存在を予測すべき義務はないものというべきであり、また、前方を見ていれば時速六、七〇キロメートルないしエンジンブレーキ作動後の時速五五キロメートルで対向進行してくる自動二輪車を発見できたという証拠もない(仮に、静止してじつと目を凝らしていれば発見できるかも知れないとしても、通りすがりの走行中の運転者に、夜間無灯火による高速走行といつた自他の生命財産を顧みない極度に危険な運転行為に及ぶ徒輩の存在を常に予測して、かくのごとき過酷かつ絶対的な注意義務を課することは明らかに不当である)ことからしても、右過失自認の供述部分は、衝突という結果から敢えて注意不足をこじつけた捜査官の誘導に応じたにすぎない疑いが濃く、これをもつて、被告久谷に過失ありとすることはできない。

また、乙ア第五号証、第九ないし第一二号証、原告及び被告両名各本人尋問の結果によれば、被告久谷は、本件事故当時、たまたま本件普通車の前照灯を下向きにしており、右折に際し、交差点内のいささか手前部分を進行するいわゆる早回りの方法をとつていたこと、右事故直後、転倒している原告らに対し、被告久谷が「すいません、すいません」などと言い、泣いていたことが認められるが、前照灯を下向きにしていたことについては、これが注意義務違反又は過失にあたるとはいい難く(そういうためには、夜間暗がりの交差点を右折する車両の運転手は、無灯火で対向高速直進してくるかもしれない危険車両を発見し、その車両の運転者の生命身体を保護するために、常に前照灯を上向きに照射しなければならない義務を負うとしなければならないが、もちろんそのような義務までをも負ういわれはない)、多少の早回りについても、周囲に全く車両の存在を認識し得なかつた状況下においては、これを過失として評価することはできないところであり、さらに、右事故直後の被告久谷の言動についても、思わぬ事故に巻き込まれて気も動転した善良な女性が思わず示したごく自然な態度にすぎないものというべきであり、これをもつて被告久谷の過失の証左とすることもできない。

ところで、調査嘱託の結果(自動車保険料立査定会岡山調査事務所宛)によれば、同調査事務所では、本件事故について、「新判例タイムス〔編注:原文ママ〕を準用し、過失修正を適用しても被告久谷の車両の有責は免れない」との見解を有していることが認められるけれども、前記認定の本件事故状況及び被告古山の過失内容に照らし、右見解は当裁判所の採用しないところである。

ちなみに、右「新判例タイムス」なるものは、おそらく別冊判例タイムズ第一号民事交通訴訟における過失相殺率等の認定基準一九九一年全訂版を指すものと目されるが、右は、故意に危険行為に及ぶようなことのない通常の運転者による通常の過失、重過失を勘案して、その利害の調整と損害の公平な分担をはかるための一応の基準としては意味があるものといえても、本件事故のように、一方当事者が、無免許で夜間無灯火による車両を高速走行させるなどという自他の身体生命財産の安全を顧みない極度に危険かつ反社会的挑戦的な故意行動をとつており、その危険性が当然のように現実化したにすぎない形態の事故の場合には、右基準の予想する前提を根本から欠いているものというべきであり、本件事故にも、型どおり右基準を当てはめようとするのは正当ではない。もっとも、本件事故について、右基準を適用するとしても、被告古山の過失内容を正当に評価するならば、本判決と同様の結果を得られるものと解され、被告久谷を有責とした調査事務所の判断には直ちに与し難く、同被告を有責とすることは容認できない。

そのほか、甲第九号証の二によれば、被告久谷は、岡山簡易裁判所に対し、原告を相手に、本件事故後、弁護士を代理人を立てて、本件事故の損害賠償についてしかるべき調停を求める旨の申立をし、その際、過失割合を、同被告二割、原告八割とするかのごとき提案をしたことが認められるが、弁論の全趣旨によれば、右過失割合は、同被告代理人が事態の円満解決のためにとりあえず意見として述べた(前記判例タイムズの基準に対する理解不足に引きずられた疑いもある)ものにすぎず、右調停は結局不調に終わつたことが認められ、右のように交渉過程において妥協のための一定の提案をしたからといつて、直ちに同被告に過失責任が発生するいわれもない。

被告久谷運転の本件普通車の構造上の欠陥又は機能の障害が本件事故と因果関係を有することをうかがわせるような事実も認められない。

従つて、被告久谷は、自賠法三条但書により、本件事故の賠償責任を負わないものというべきである。

六  賠償額の減額(被告古山)

被告古山は、抗弁2のとおり、本件事故前、原告が先に本件二輪車に同乗していた者を無理やり下車させて飛び乗つてきた旨主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。

前記五認定のように、原告は、被告古山の夜間無灯火による自動二輪車の高速走行を容認して本件二輪車に同乗していたことなどからして、右走行による危険をある程度自ら引き受けることもやむを得ないものというべきところ、その度合いは、右認定の同乗の経緯態様に照らし、全損害額の五割に及ぶものというべきである。

従つて、被告古山が原告に賠償すべき損害額は前記四6の損害合計額五三一五万〇八七七円の二分の一に当たる二六五七万五四三八円となる。

七  填補

原告は、自賠責後遺障害補償保険金として一二九六万円を受領したことを自認するほか、前記四1のとおり、本件事故による傷害の治療費として、自賠責から一二〇万円の填補を受けているから、填補額合計は一四一六万円となる。

八  弁護士費用

本訴の内容、審理の経過、賠償損害額等に鑑みると、弁護士費用は一〇〇万円と認めるのが相当である。

九  結論

以上によれば、原告の本訴請求は、被告久谷に対しては理由がないから棄却し、被告古山に対しては、賠償損害額から填補額を控除して弁護士費用を加算した一三四一万五四三八円及びこれに対する本件事故の後である平成二年一〇月一八日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条を適用し、仮執行宣言について同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 矢延正平)

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